データのコピーをもらおうー過去データは宝の山

患者さんには検査結果のコピーをもらうことをお勧めする。特に複数の病院にかかることがある場合には、それぞれの病院で行った検査のコピーを持っていることが大切だ。

今は、ほとんどの病院が電子カルテを用いている。マウスを数回クリックすれば、簡単にコピーを印剥できる。「検査結果のコピーをもらえませんか」といっても、そんなには嫌がられないだろう。CTやMRIであれば検査の読影結果報告書で十分である。

これらの検査データを、他の病院を受診する時に持参すれば、その病院での診療にとても役立つ。担当医にとっては宝の山だ。

まず、健康時のデータが基礎データになる。例えば、熱と風邪症状があって医院を受診したとしよう。感染症を疑って白血球数を検査した際に、健康時の白血球数がわかっていれば、比較ができる。ドックの時が7000で受診時が1万であれば、まず細菌感染であろうという判断ができる。ドックの時も1万だったのであれば、増えていないという判断で薬を考えることになる。

もっと大切なのは、ある医療機関を受診して診断が確定しない場合だ。特に、原因不明の熱や胸痛、腹痛がある場合などで、ある病院で診断がつかず、別の病院を受診する際には、「どの検査で異常がなかったか」ということが大切な情報になる。同じ検査を繰り返す無駄が避けられ、より精度の高い検査をしたり、より頻度が少ない疾患を考えての検査を行うことができる。

さらに、経過が長い慢性の疾患であれば、発症時からの検査データの変化が正しい診断をする材料になるし、その病気の進行度の判断に役立つことも多い。

日頃、歯がゆく思うのは、「昨夜、病院の救急外来を受診して、一通り検査を受けて『たいしたことはないようだから、明日近くの先生にみてもらってください』といわれた」と翌日、来院してくる患者さんをみる時だ。「たいしたことはない」といっても高熱がある。診療するからには責任が伴う。昨日のデータが手元にあれば、適切な判断ができるし、今日のデータとも比較ができるのにと残念に思う。

近い将来には、患者さんは自分の病歴や検査データを電子情報のかたちで持ち、医療機関を受診することになるだろう。