大切な人の受診には同席してー同伴者が医師とコミュニケーションを

あなたの大切な人、例えば配偶者や肉親が病院を初診する際、特に本人が受診を渋り、あなたの強い勧めでようやく受診したような場合には、診察室まで付き添って見守ることが的碓な医療につながることが多い。

医師にとっては、目の前にいる患者さんが話す内容がすべてである。その患者さんが本当のことをいわなければ、それでおしまい。また、医師が胃の内視鏡検査が必要だと判断しても、患者さんに強い拒否の雰囲気が漂っていたり、「嫌です」という言葉が出れば、「まず、薬で様子をみますか。それでよくなっても、薬が切れてから症状がでれば検査が必要ですよ」といってしまえば、やっと受診させたあなたの苦労は水の泡になる。

あなたも診察室に入り、「長く症状が続いていて、本人が嫌がっているのをようやく受診させたのですから検査してください」と後押しすれば、医師も「せっかく受診されたのだから白黒をつけて帰りましょう」といって前進することができる。

認知症の患者さんの場合も同居している人、あるいは日頃の状態を知っている人が同伴することが大切だ。認知症の初期にでてくる短期記憶の低下を確認しようと「今日の朝は何を食べました」と質問しても「今朝はご飯と豆腐の味噌汁」との答えが正しいか間違っているかの確認のしようがない。医師にとっては家族から聞く日頃の本人の様子は重要な情報であるし、また、家族にとっても、診察室という特殊な場所で本人がどのように振る舞っているかも重要な情報である。だから、日常生活に支障がない程度の認知症であっても時々は家族に同伴していただきたい。

また、認知症を持つ患者さんが、他の症状で受診されるときに、ご本人がうまく自分の症状を表現できないために、医師側が病気の全容をつかみかね、診断がつくのが遅くなることも多い。

認知症には縁がないと思っている人でも、高齢になると、脳をはじめとする全身臓器の機能が落ちてきていることは否めない。日頃は若年者と比べてもまったく遜色がない応答をできる高齢者でも、高熱があったり、脱水があったりすると、途端に要領を得た応答ができなくなり、医師が症状やその経過を聞き出すのが困難になってくることがよくある。家での様子がいつものと異なり心もとない状態であれば、家族が同伴すべきである。