糖尿病
糖尿病については患者さん個人の数年間のグラフや通院患者さん全員の
毎月のヘモグロビンA1cの分布を示すグラフなどを用い、患者さんが理解し易い診療を行っています。
インスリン治療にも対応しています。
糖尿病 対象疾患・診療内容 | ●糖尿病の診療、食事・運動指導 |
患者指導に用いているグラフ一覧
糖尿病歴のない検診受診者358名のHbA1cの分布の棒グラフです。グラフの横軸がHbA1c値(%)で、縦軸が人数を示します。HbA1cの平均値は5.48%でした。背景の色は糖尿病基準とコントロール目標を示しており、6.5%以上が糖尿病で、7%未満が合併症を起こさないための目標値です。A1c値の棒の色は、健診での基準を示しています。緑(5.6~5.9%)が「軽度異常」、黄色(6~6.4%)が「要観察」に区分され、約半数の人に注意を促す厳しい基準になっています。厚生労働省が、糖尿病を減らしたいと真剣に考えていることを反映しています。
358名のうちA1c6.5%以上の人が8名(2.2%)あり、新たに糖尿病と診断されました。
A1cが平均より高めの人は、肥満がなくても糖尿病になっていく可能性がありますので気をつけましょう。
糖尿病歴のない検診受診者(●)と糖尿病で通院中の人(●)に分けて体重と肥満度をプロットしたグラフです。横軸が体重で、縦軸がBMIです。BMIは肥満度の指標の一つで体重を身長で2回割った値で18.5から25未満が正常域で25以上が肥満とされます。平均値の比較では、糖尿病患者が健診受診者より体重が約8kg重く、BMIで1.4高い値で肥満傾向にあります。糖尿病患者の中には、高度肥満(BMI30以上)の人が6.6%、軽度肥満(BMI25以上30未満)の人が24.6%と肥満の人が3割以上います。その人たちは。BMI25未満にすることが目標になります。一方でBMI18.5未満のやせ型の人も5%あります。やせ型の人は、インスリン分泌自体が減っている場合が多く、単純な食生活改善や運動では糖尿病のコントロールが難しい場合があります。
インスリンは膵臓のβ細胞で作られます。まず、プロインスリンが作られ、それがインスリンとC-ペプチドに分解されて血液中に分泌されます。従って、C-ペプチドの量を測定すれば分泌されるインスリンの量がわかります。
早朝空腹時のCPI(血中C-ペプチド値÷血糖値×100)は体内で作られたインスリン量を示す指標の一つになります。CPIが高い人(グラフの上方の人)はインスリンが多く作られていて、逆に低い人(グラフの下方の人)は作られるインスリン量が少ないことになります。上方の人で肥満の人(BMIが高い人:赤印)は、体重を減らしさえすれば糖尿病が改善する可能性が高いです。下の方の人は、より厳密な生活のコントロールが必要であり、一部の人はインスリン注射を用いなければ血糖をコントロールできません。
横軸は、2014年からの10年間を表しています。点は赤がHbA1c、紺色が随時血糖、水色が空腹時血糖で、それぞれ毎月の平均値を示します。毎年、正月前後にHbA1cが上昇し4月頃まで続き、夏から秋にかけて改善することが多いようです。しかし、積雪が多く雪かきに精を出した?2019年の年初には低下するなど例外的な動きをすることもあります。
年末年始の飲食や冬場の食生活や運動に留意することが大切であることがよくわかります。
横軸はHbA1c、縦軸が血糖値で、マークが各個人を示します。マークの形が、●空腹時、▲食後(随時)で、色が薬の種類です。複数の薬を飲んでいる人は発売年度が新しい系統の薬の色にしてあります。背景の色は糖尿病の治療目標値を表しており、青と緑の範囲が目標になります。
この月の全員のHbA1c平均値は6.61%です。斜線は血糖とHbA1cの換算式を示します。例えば、HbA1c7.0%は平均血糖150mg/dlに相当するということです。斜め線から大きく離れた左上の人はHbA1c値のわりに血糖値が高く、食後に血糖が上がりやすいか、直近の食生活が乱れている可能性があることになります。逆に右下に離れている人はHbA1c値のわりに血糖が低く、直近の数日だけ食事を厳しく制限した可能性が高い可能性があります。
薬なし(水色)でも良い生活習慣を保ってコントロールが良好な人が多数おられます。
個人の経過グラフ
「各個人の血糖・HbA1c・体重の初診時からの経過」を示します。
横軸は、年・月を表しています。折れ線は赤がHbA1c、青が血糖、下の緑は体重で、各月の値とその経過を示します。初診から1年程経過した患者さんやコントロール状態に変化のある長期通院の患者さんに渡しています。このグラフから、血糖やA1cと体重との相関性が読み取れ、また、個人の傾向(悪化しやすい季節など)が把握でき、「これは役立つね」との感想をよくいただきます。
Aさんは、春から秋にはスポーツに取り組んでいる人です。肥満を伴っており、体重が増加するとHbA1cが上昇することが多いようです。特に冬場に悪化しており、体重が増加しなくても冬場に悪化する年もあるようです。冬場の摂取カロリーを減らし、冬場にも運動をすることが大切だと思われます。
Bさんは、最初はHbA1cが9%を超える高い値でしたが、数か月で4㎏減量したところ、HbA1cが6.5%前後に改善し、以後は多少の変動はあるものの良好な状態を保っています。
第71回富山県医学会において優秀賞 受賞
平成29年1月29日 第71回富山県医学会 一般演題(ポスターセッション)において当院看護師が「当院における患者データやグラフを活用した糖尿病患者指導」という題で発表し、最優秀賞に次ぐ「優秀賞」をいただきました。