膵臓癌は早期発見が難しいー膵臓癌のリスクの高い人は?

一番発見が難しく予後が悪い癌の1つが膵臓癌である。2017年8月に公開された国立がん研究センターの集計でも、癌の大きさが2cm以下でリンパ節転移のない状態であるⅠ期で見つかったのが6.3%しかない。そのⅠ期の5年生存率が46.8%、病期にかかわらず手術などの観血的治療を受けた人の5年生存率が31.8%である。

膵臓癌はまず発見するのが難しい。膵臓は胃の後ろ、背骨の前にある。手軽にできる超音波の検査では体が大きく肥満の人では全く見えないこともあるし、みえる人でも膵臓の尾側半分はよくみえない。膵臓全体を画像としてとらえたければCTやMRI検査をするしかない。

また、膵臓には厚みのある被膜がなく、癌ができた場合に周囲に広がりやすい。さらに、上腸間膜動静脈は、膵鈎部に抱え込まれており、肝臓や胃・脾臓に血液を運ぶ腹腔動脈大動脈は膵体部のすぐ頭側にある。また膵臓のすぐ後ろには、大動脈や大静脈がある。それらに癌が浸潤すると切除することが難しい 。

症状も出にくい。上腹部痛や背部痛が出るが、いろいろな病気で出る症状でもあるし、この症状が出る時にはかなり進行していることが多い。特に、膵尾部は症状が出にくい。私の経験でも、便秘症状の患者さんのCT検査をしたら、膵尾部の大きな膵臓癌が見つかり、その癌で大腸が強く圧迫されたための便秘だったことがあった。

逆に、膵頭部にできる癌では、総胆管を圧迫すると黄疸が出るので、比較的早く発見されることがある。それでも、治癒を期待できる手術ができることは少ない。

膵臓癌の発見に役立つことがあるのが、CA19-9などの腫瘍マーカーで、ドックにも取り入れられている。

早期発見が難しいので 、膵臓癌になりやすい人(ハイリスクの人)には、定期的にCTやMR検査をすることが勧められている。

そのハイリスクの人の病気の1つに膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)という膵臓に嚢胞ができる病気がある。また、血縁に膵臓癌の人が複数いる人もハイリスクとされている。

アルコール多飲の人や糖尿病の人も膵臓癌発症のリスクが少し高いとされている。生活習慣の乱れなどの誘因がないのに、糖尿病が急に悪化したような場合は、膵臓癌も念頭に腹部CT検査を受けてみるのも大切だと思われる。