男が長生きするには?ー伊達男と料理人

「75歳以上の男は、妻が先に他界するとほとんど3年以内に死んでしまう」

以前どこかで聞いた話だ。ただ、この話には「伊達男と料理をつくる男以外は」という例外がついていた。

妻に頼り切っていた男は、その頼りの妻がいなくなった途端に、心の張りを失う。同時に規則正しい食事を中心とした生活ができなくなり、心身の老化が急速に進み死が迫ってくるということだ。外来でも時々、奥さんが急な病気で他界され、残された夫が数力月で弱って入院される事例がある。

「伊達男」は見た目に気を配るから、入浴や洗面・歯磨きなど体の清潔保持が自然にできている。また、女性の相手はもちろんのこと、他者とのコミュ 一ケーションをとることが楽しみだから、脳が常に鍛えられている。

「料理をつくる男」は食生活を中心とした生活リズムが崩れない。栄養が保たれるし、調理自体がよい運動であり、脳を刺激する高等作業だから、心身が共に衰えにくい。

男が長生きしたければ、奥さんを大切にして長生きしてもらうか、そうでなければ「伊達男」か「料理をつくる男」になるしかない。

一方、女性の患者さんをみていると、夫が亡くなった後、2~3年ほどはさすがに落ち込んでおられるが、その後は、以前よりもむしろ元気になられる方が多いように思う。

これを、女性は「精神的に自立している」とか「薄情だから」とする解釈もあろう。

しかし、夫婦では女性の実年齢が数年若いことが多いし、本来、男性より平均寿命が長い。そのことを考慮すると、平均して10年ほどは夫より肉体的に若く、その分元気で長く生きて当然だ。

女性は、若い時には人生の先輩である夫に頼って生きている面もあるが、高齢になってからは、先に老いていく夫に自然に同調して生活してくれている。そして、夫の死後数年すると、本来の年齢の自分に戻っていくと考える方が正しいのではないだろうか。

このように考えると、男としては長年連れ添ってもらい「自分にあわせて生きてくれている妻」に対して、自然と感謝する気持ちになれると思う 。