内視鏡を受ける間隔は?ー確率論的には2年に1回?

「 胃カメラは毎年受けた方がいいのでしょうか?」

内視鏡室で検査をする前後に患者さんからよくされる質問の1つである。

胃癌を発症する可能性・リスクから考えると、まずはピロリ菌との関連だ。

「私はずいぶん前に除菌したから一度も胃カメラしたことはない 」とピロリ菌が専門の教授が宴席で豪語していたことがある。

ビロリ菌感染が胃癌の主因であることがわかって、ビロリ菌胃炎に対しても除菌が保険適応になった。国民総除菌時代という言葉も使われるようになり、中学生や高校生にビロリ菌の検査をする先進的な自治体も出てきている。

「除菌をすると胃癌のリスクは下がる。特に、胃の萎縮が出る前の若いうちに除菌した人は胃癌のリスクはかなり低くなっている 」のは事実であるが、一方で「胃の萎縮が進行してから除菌した場合は胃の粘膜にすでに発癌リスク(遺伝子などの変化)が蓄積しているので、胃癌のリスクは急には下がらない」こともわかってきており、当院でも、平成28年に発見した早期胃癌8例のうち3例はピロリ菌陽性で、残りの5例は除菌後の人で、除菌から胃癌発見までの年数は2~10年だった。やはり、除菌後も胃内視鏡検査を受けておく方が安心だ。また「多くの人に除菌をした結果、胃癌全体は減ってきているが、欧米に比較的多い食道胃吻合部の癌が少し増えている」ことも指摘されている。

もう1つ 、胃癌がどれくらいの速さで大きくなるかという点である。自分の講演で「内視鏡でみえる大きさの早期胃癌は何年ほどで進行癌になるでしょう? 」という質問をすると、「半年」と答える人が一番多い。こんなに速く進行癌になってしまうと思っていれば、検診を受けるのが怖くなるのももっともだ。もちろん胃癌の肉眼的な形や組織型によって異なる。スキルスのように内視鏡で捉えることが難しく進行が速い胃癌もあるのだが、普通の胃癌は、内視鏡でみえるようになってから「約3年は早期の状態」というあたりが正解だろう。

したがって、ピロリ菌がいない人や胃粘膜の萎縮がない若い時に除菌をした人、また、家族歴に癌疾患がない人は必ずしも毎年内視鏡検診を受ける必要はないだろう。

ただ、ある瞬間に、あなたの胃がどのようになっているかは胃の中を覗いてみないとわからない。心配な場合は検査を受けましょう。