2006/12/02
働く若い人たちに、うつ病が増えているという報道が目につく。
「日中でも眠い。疲れが取れない」と、
コンピューターソフト関連の仕事をしている三十代の男性が訪れた。
検査したところ、睡眠中の無呼吸が基準以上に見られ、睡眠時無呼吸症候群の診断がついた。
男性は夜間に鼻から加圧する装置を装着し、「少し楽になりました」と話すが、
言葉ほど元気になったようには見えない。
詳しく聞くと、「仕事が多く、連日夜の十時すぎまでかかる。
職場の全員がそうなので、自分だけ定時に帰るわけにいかない」と言う。
これでは疲れて当然。本当は、十分な休息や睡眠時間が必要なのである。
別の男性は、微熱や疲労感、体のしびれなどを訴えて来院された。
入院して精密検査し、「軽度の椎間板ヘルニアと、うつ傾向」と診断された。
会社の期待の若手で海外出張も続き、あまりの仕事の多さに心身が耐えられなくなったようだ。
疲れていることを認めたくないのか、あるいは感じていても上司に言えないのか、仕事を休むことができなかった。
最終的には、入院という事実と診断書の助けを借りて転職された。
職場のうつ対策に、心療内科やカウンセラーの導入が進められているのは良いことであろう。
だが、本当に必要なのは、ヒトという生き物を機械や道具のように扱いがちな
「利益至上主義」の会社や社会に対する啓蒙と指導ではないだろうか。