2010/07/14
「夜にへその横の辺りが痛くなって眠れず、痛み止めを飲んだ。
おなかを壊したのかもしれない」と高血圧で定期通院中の患者さんが受診された。
「下痢気味だけどいつものことだし、
排便してもジクジクした痛みは変わらない」といまひとつ胃腸の病気らしくない。
念のため、白血球数を診て腹部超音波検査をしたが、
持病の胆石が悪さをしているわけでもなさそう。
おなかのついでに背中を診ると赤い発疹が数個ある。
「ああ、これですか。最近仕事が忙しくて2~3日前から腰が痛くて湿布したらかぶれたんです」。
「そうですか?たまに腹痛で来られて検査をしても病気が見つからず、
後で発疹が出てきて帯状疱疹だったという方が年に1人はいるんですよ」とお話はしたものの、
結局、整腸剤で様子を見てもらうことにした。
3日後、右の背中からへその横の辺りにかけて
水疱や赤い発疹が帯状に広がった状態で再び来院された。
3日分出した整腸剤には関係なくすぐに来院するように
念押ししなかった自分を反省し、抗ウイルス薬を処方した。
水ぼうそうに感染した後、そのウイルスが神経節に潜む形で残り、
心身の過労などで免疫系が弱ったときに再び活発化し、
その神経の領域の皮膚に発疹を作る病気が帯状疱疹である。
基本的には時間がたつと発疹のあとを残して治癒する。
四谷怪談のお岩さんの顔は帯状疱疹だといわれているが、
顔に関係する神経で起きた場合は見た目以上に厄介なことになる。
顔面神経まひや耳鳴り、目まい、目の角膜の病変などを起こすのである。
また、発疹が治った後も半年以上、痛みに悩まされる患者さんも多く、
「帯状疱疹後神経痛」という病名があるほどである。
最近、この痛みに対してプレガバリンという薬が日本でも認可され使用できるようになった。
帯状疱疹は、6人に1人が一生の間に1回はかかる病気といわれている。
特別な病気ではないが、かかったときはオーバーワーク気味の生活を見直したり、
さらなる原因がないか人間ドックに入るのも良いかもしれない。