2010/11/17
外来でふとした拍子に話が弾むことがある。
リンゴ農家の患者さん。
猛暑で大変だったリンゴの話になった時に「市場に出すフジ以外にわざわざ、
ほかのリンゴや桃などいろんな木を植えているんですよ」と言われた。
なぜかと尋ねるとミツバチのためとのこと。
私がけげんな顔をしていると「ミツバチがいなくなってしまうのは偏食のせいではないか、
と私たちは考えているんです」と答えられた。
近年、「ミツバチの失踪」が世界的な話題になっている。
農作物の受粉を担っているミツバチが巣に帰ってこないでどこかに消えてしまう。
農家にとっては深刻な問題でテレビでも特集を組んでいた。
原因がはっきりせず、農薬の影響やダニなどの感染・
人工繁殖の弊害など幾つかの可能性が考えられているそうだ。
患者さんの説明では、ミツバチにリンゴの受粉をさせるのだが、
同じ種類の木の花粉やみつだけを食べることになり、それが偏食になるというのだ。
いろんな木や花を植え、多くの種類の花粉やみつを食べてもらうことで
栄養のバランスを保ち、強いミツバチにするとのこと。
研究や工夫しながら仕事をしておられるのだと感心した。
言うまでもなく、人も栄養のバランスが大切。
国は「食事バランスガイド」を作成し、
1日30種の食品をバランスよく食べるように推奨している。
栄養素不足の病気に、胃の切除後の貧血がある。
ほとんどは鉄分不足だが、ビタミンB12の不足による貧血も
手術後10年以上たつと出てくる人がある。
亜鉛不足で味覚障害になることもある。亜鉛は牡蛎に多い。
手のひらや足底に多数の膿疱ができる慢性難治性の皮膚疾患、
掌蹠膿疱症にはビオチン(ビタミンB7)が有効なことがある。
ビオチンはレバーや大豆、卵黄に比較的多く含まれるが、
食べ物だけでは欠乏状態を改善することはできないそうだ。