2014/10/23
それは数年前の11月中旬の火曜日だった。
いつもの朝のように食後のコーヒーを飲み、医院を開けに寒い中を数分往復し、もう1杯コーヒーを、と食卓から立ちあがった瞬間だったか?
右眼の中が爆発したように一瞬、光が走った。すぐ煙がたったように曇った状態になり、中心以外ほとんど見えなくなった。やがて霧がすーっと晴れるように見えるようになって来たが視野の上側の約4分の1が黒くて見えない状態がしばらく継続した。これでは仕事ができなくなる・・と動転したが、それもゆっくりと回復して普通に見える状態になった。
この間おそらく1分余り。この間に目を洗いに行ったり、妻に「右目が一瞬見えなくなった」と話していた(らしい)。
医院に行って医学書やインターネットで検索、すぐ一過性脳虚血発作の1種である「一過性黒内障」の典型的な症状と判った。頚動脈に出来た血栓が、内頚動脈の血流にのって眼動脈に瞬間的に詰まり、視覚障害を起こす病気である。目の症状なので多くの人は眼科に行くし、ほんの一瞬の症状なので受診せずに過ごしてしまう人も多いようだ。
午前の診療を終えて公的病院の信頼している神経内科の先生を受診。MRA(MRで血管を写す検査)も受けた。幸い脳には動脈硬化や梗塞巣は全く見られず、「頸動脈洞が少し膨らんでいますね。ここで血液が渦を巻いて血栓を作ることもあるんですよ。しばらくバイアスピリンを飲んでおくのが安全でしょう。」と言われてホッとして帰ってきたが、血圧は高くないし、肥満も高脂血症もないから血管系の病気には縁がないと自信をもっていただけにショックだった。
振り返るとその前の数日は多忙だった。土曜日は診療の後すぐに大学医局の同門会に出かけ、日曜日は消化器病学会地方会に隣県まで車で往復、月曜は診療後の夜に公的病院での症例検討会に出かけた。帰ってから夕食を食べ、TVを11時まで見て寝たが眠りが浅く何度も目が覚めて排尿に行った。食事についても同門会で飲食した後もトンカツ、カレーと夕食に脂っこい物が続いていた。数日続いた過労・脂っこい夕食さらに不眠・寒い朝など複数のリスクが重なり、ダイヤル式の金庫の鍵が偶然一致して開くように血栓が出来て飛んだのだろうと思う。
その後は、忙しい日が続かないように、また、夕食は脂っこい物を控えるようにと気をつけている。幸い、数年、同じような症状はでていない。
一過性黒内障を放置し、その後に重い脳梗塞を発症する人も多いとのこと、同じような症状を経験した人には脳外科受診をお勧めします。