2007/03/17
「はい、上手です」。そう言いながら朱墨で大きな丸をサラサラと書き入れる。
すると、言葉に導かれるようにして、子供たちはいつの間にか本当に上手になっていく。
子供が教わっていた書道の先生の言葉は、まるで魔法のようだ。
糖尿病の患者さんにも同じように指導できたら理想的なのだが、といつも思っている。
食事などの身についた生活習慣を変えるのは難しい。
しかし、その改善に伴って血糖値も改善し出すと、もっと良くしようとやる気を出す人も多い。
自ら体重や血糖値をグラフにして励みにする人もいる。
私がするべきことは「夕食後すぐ歯磨きして、後は寝るまで何も食べない」
「毎日一時間散歩をする習慣をつける」「体重を毎日測る」などの
患者さんが取り組みやすい方法を、いくつか示してあげること。
そして、効果が少しでもあれば褒めて励まし、継続してもらうことである。
冬から春先にかけては、年末年始のごちそうに始まり
運動不足もあいまって、病状が悪化する患者さんが多い。
私が熱心になればなるほど、患者さんを注意する言葉になってしまいがちだ。
その気持ちをぐっと抑え「冬なのに体重が増えませんね。
良いですねえ。このペースで春まで頑張りましょう」
暖かくなるまで、これくらいの〝魔法の言葉″で済ますことができれば良いのだが。