2007/04/21
当院に元気に通院しておられる人で最高齢の方は、もうすぐ米寿になる。
「元気」といっても病気があり、それも単なる生活習慣病でなく、心臓弁膜症だ。
心肥大や不整脈があり血圧も高く、安静時にも多呼吸がある。
酸素吸入を勧めているのだが、頑として首を縦に振らない。
しかし、その節制ぶりには頭が下がる。
「就職が決まって、さあこれから仕事を頑張ろうという矢先、
職場検診で心臓弁膜症と言われたんです。
何年生きられますかと聞いたら
『そうだねぇ、今の医療水準だと十年でしょう』と事もなげに言われたんですよ」
目の前が真っ暗になったそうだが、その後「死ぬ気で」節制した。
酒やたばこは一切やらないし、塩分が悪いと言われてみそ汁も飲まない。
「宴会ではいつも大酒飲みの横に座って、
ついでもらった酒はその人にそのまま渡していたんですわ」。
いつの間にか、仲間の中で一番長生きになってしまった、といつも言われる。
「ただ、周りには不義理しました。
お酒の席はなるべく断ったし、親せきの急な不幸にも季節や
時間によっては出かけなかったこともありました」と少し寂しい顔。
病気と付き合いながら、仕事を全うし、子どもを育ててこられた。
「一病息災」という言葉で表すのが失礼なほど、
真剣な節制が今日のおだやかな日々につながっているのだ。