2014/10/23
校医をしている学校の養護教員から「食物アレルギーによるアナフィラキシーの可能性があってエピペン®を携帯して登校する生徒が入学してきたので先生方に講義・指導をしてほしい」と依頼があった。
アレルギー性疾患が増加しているが、特に教育現場では食物アレルギーによるアナフィラキシーショックでの死亡者が稀ではあるが出ていて対応に神経を使っている。
アナフィラキシーはアレルギー反応が強く起こり、血管内から水分が外に滲み出して、全身に蕁麻疹が出て、血圧が下がり、肺に水が溜まったり、のどのむくみや気管支の収縮によって呼吸ができなくなったりする怖い病態だ。
アレルゲンである食べ物を食べないように注意することが一番大切であるが、いったん発症すれば、迅速な対応が必要になる。
アナフィラキシーショックを起こした時に症状を改善させるエピネフリン(商品名エピペン)の注射は、もちろん医師の処方が必要であるが、緊急投与が必要な薬なので処方を受けている患者であれば、本人やその周囲の人でも注射することが認められている。私はエピペン®を処方したことは1回だけ、知識は不十分だ。製薬会社に連絡を取り、注射練習用のセットを入手し、富山市で行われた富山大学小児科足立教授の「学校での食物アレルギーによるアナフィラキシーなどへの対応」の講演会に出るなどの勉強をして学校に出かけた。
「アナフィラキシーを起こした生徒が出た場合の対応手順、すなわち、だれが注射をするか、だれが救急車を呼ぶかなどの担当をあらかじめ決めておくこと」「エピペン®の保管場所を関係者全員が知っていること」そして何よりも「迷った時にはエピペン®を注射すること」などをお話しした。
不幸に至る事例で多いのは「前回アレルギーが出た時にはしばらくしてそのままおさまったから、今回も注射せずに様子を見たいと本人が躊躇し、周りもそれに同調して注射のタイミングを逸する」場合とのことを強調した。
そして、先生方に注射の仕方を説明し、寸劇形式で練習してもらった。若い先生が3名、すぐに前に出てこられて役を分担、倒れている生徒のズボン越しに太もも外側に注射する動作やほかの人が救急車を呼びに行くことなどを演じてもらった。すると自分の太ももには簡単に注射できたものが、他の人の太ももに注射するときにはあわてているせいもあって注射キットがズボンの生地で滑って失敗した。自分の腕や手と相手の太ももをしっかり固定し角度も意識しないとうまく注射できないことが良く分かった。
先生方からは「1回注射していったんよくなっても救急車を待つうちにまた悪くなったらもう1回注射してよいのか?」「注射のキットからは針先は何センチでるのか?」「厚い生地のズボンを針は貫通できるのか?」などの鋭い質問が出た。正確な答えを持ち合わせていない点については製薬会社に確認して、「病院への搬送が遅れ症状が再度出た時にはもう1度注射してよい」「針は注射の瞬間にキットから15mm出る」「厚手のジーンズくらいは十分に貫通する」ことなどを翌日、学校に連絡した。
学校の先生方が組織として機能的に働いていることを改めて感じさせられた経験だった。