2006/09/09
当院に一番遠くから受診されるのは新潟県の患者さんたちだ。
年配の方々で、以前勤務していた病院時代から15年以上のお付き合いになる。
病院を去る時、次の担当医にお願いしてきたのだが、
新しい先生や、名前でなく番号で呼び出しをするようになった病院に馴染めず、
わざわざJRに乗って来てくださる。
私との関係は、最初から良かったわけではない。
病気の説明をしているうちに、いつのまにか口論のようになったり、
診察中に家族の病気のことで泣き出したりと大変なこともあった。
それが長い年月の間に、家族構成や家族の病気まで私の頭に入り、
何でも気兼ねなく相談できる関係になっている。
しかし、通院が年々大変になり、何より急の病が心配だった。
いざという時は近くの医療機関を頼るしかない。
ある日、一人のおばあさんから電話があった。
「昨日、急に調子が悪くなって、病院の救急に行ったんだけどさあ。
若い男の先生やったけど、親切に診てくださったんだわ。
足もだんだん悪くなるし、これから、この先生にかかってみようと思うから、
紹介状書いてくれないかね」と、いつもより少し元気な声だ。
おばあさんのお眼鏡にかなったらしい。
救急室での青年医師とのやりとりを想像し、
二人が新しい良い関係をつくってくれるよう祈りながら紹介状を書いた。